正義の名を借りるな
株主総会シーズンで外にでて飲む気がしないので、今日も何か書こうと思う。
そういえば、先日こんなことがあった。
羽田空港で、荷物の保安検査をしようと並んでいたところ、隣の列から怒鳴り声が聞こえてきた。何に怒っているのかと見てみると、40代過ぎの長身の男性が、空港のスタッフについて何やら文句を言っている。
「遅れてきた奴が、優先レーンを通れて、早めに来た俺たちは長い間待たされている。俺のラウンジでコーヒー飲む時間はどうするんだ?俺は株主だから総会で文句言ってやるぞ。」
内容としては概ねこんなところであるが、私は、この方の言っていることに違和感を覚えた。言っていることは一見正しそうだけど、それは正しくないと思った。寧ろこの男性に対して怒りを覚えるくらいであった。
それはなぜだろうか。今日はそんなことを考えてみたい。
そこで、この男性の言い分を一文一文分解して検討してみる。
①「遅れてきた奴が、優先レーンを通れて、早めに来た俺たちは長い間待たされている。」
これは、一見、正当な平等主義の主張にみえるわけだが、これは正当な平等主義であろうか。
ここで「遅れてきた奴」という表現の意味するところは、その後の「早めに来た俺」という表現を加味して解釈すると、「怠惰な奴」という意味を含意する。しかし、そもそもこの男性は、この時「遅れてきた奴」とされる者に事実確認をしていない。ということは、この表現を確認するだけで、自己の被害者ぶりを強調し利己的な目的を達するためだけに「遅れてきた奴」という表現を採用したことが分かる。つまり、何ら平等主義とは無関係である。
②「俺のラウンジでコーヒー飲む時間はどうするんだ?」
この発言は、①の発言が平等主義に何ら無関係であることを強調している。
③「俺は株主だから総会で文句言ってやるぞ。」
最終的には、権威を利用した脅迫である。もはや平等主義は完全に無関係であることが見て取れる。
正義の名を借りて自己の利己的な要求をとおそうとしている態度に怒りを覚えたんだなあ。ちなみに、これはネトウヨとよばれている思考停止「保守派」と同様の思考様式である。
素直に言えばいい「コーヒー飲みたいから、優先レーンを通させてください。お願いします。」と。
自衛隊合憲論のばか
私の知りうる限り憲法学者には、自衛隊が合憲であるとしているものが多数いる。
そこで、早速、憲法9条を見てみたい。
「第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
これを普通の日本語として読んだ場合、自衛隊は戦力である以上、これが保持できないのであるから、完全に「違憲」である。どうだろうか。普通に読めば自衛隊は「違憲」でしょ。
にもかかわらず、今の憲法学者の多数は自衛隊の存在を合憲とする。
正直申し上げて「ばかじゃねーのか?」と思う。
憲法学者が積み重ねてきたくだらない解釈学は、文系学問全体の信用を失墜させている。これに近いことを東浩紀氏も指摘していたように思う。
私はもともと理系であったが、大学に入るときに法律の面白さに触れ法学部に入った。が、初めて憲法学を勉強し、9条の自衛隊合憲論を知ったときに正直びっくりした。
「これは、俺が理系だったから理解できないだけなのか???」
何度読んでも納得できなければ意味もわからない。
自衛隊が合憲である根拠は「戦力」ではなく「必要最小限度の実力」だからという。
「はああ??」
全く理解できなかった。
「文系は思考停止の学問だから、ばかみたいに一生懸命、暗記しているんだな」と思ったものである。※今では誤解だったと反省しているが。
自衛隊合憲論は、文系科目全てに対する信用を失墜させる可能性があるから直ちに止めて頂きたい。
司法試験と憲法
私は、旧司法試験組で、適当なところで挫折して現在ではしがない企業法務をしています。
ここで司法試験受験をしている人に重要なことを伝えたいと思います。
それは、「試験との関係では憲法は適当にやっておけば良い」ということです。資格試験としてはそれでいい。
特に、伊藤塾に通って伊藤真氏の護憲派的な憲法論を教え込まれるのは最悪。
これはどういう意味かというと、資格試験は飽く迄、実務家登用試験だからです。司法試験受験生は法律実務家として業務をしたいと考えていたとしても、思想家になりたいとは考えてはいないんじゃないですか。その意味で、憲法の学習は適当なところ(過去問が回答できる程度)で切り上げた方がいい。
実際、実務においても自然権的発想や内在的制約的公共の福祉論は弊害にしかならない。これは実務上、残念ながら法実証主義的に考えるほかないからです。
判例、通説、有力説、多数説とか色々勉強されていると思いますが、実務上、判例と通説以外役に立たないと考えて頂きたい。
司法試験受験生諸君は、司法試験がただの実務家登用試験であることを忘れないでほしい。
【補足】ここまで書くと伊藤真氏を恨んでいるんじゃないかと誤解を受けるかもしれないので、念のため言っておきますが、伊藤真氏の修正主義的護憲論は意味不明ですが、彼の憲法に対する熱意のおかげて基礎法学、法哲学、社会学等幅広く興味を持つことができたのは非常に良かったと現在でも感謝しています。